TNNホールディングスの躍進は、大きな二つの車輪で支えられている。
　その一つはアーティストの育成。世には無数のアーティストが存在するが、才能があっても発表の機会に恵まれない作家もいる。そんなダイヤモンドの原石をいち早く発掘し、磨き、そして一流のアーティストへと育てていく。有名作家の中には同社から巣立ったアーティストも少なくない。その根本には"ビジネスを超えたアートへの思い"がある。
　もう一つは、より多くの人に作品を販売する販売力。画廊というとどうしても敷居が高く、一般には敬遠されがちだが、同社のギャラリーにはそんな雰囲気はない。まるで明るいサロンのようで、訪れるお客さんも若い人が多い。そこで作品を通した販売員とお客さんとの出会いがあるわけだ。登坂勇社長は語る。
「ふらりと寄られたお客様にとって、販売員は初対面です。その中で決して安くないアートを購入していただくには、作品力は勿論ですが、最終的には信頼関係を築けるかが鍵なんですね。ですから『あなたの誠意に惚れました。次もあなたから買いたい』なんて言われると、本当員嬉しいですね。それと同時に、より一層良い作品をご紹介しなければという責任感が生じてくるわけです。」
　誠意、信頼、そして責任感。これが業界トップの秘訣なのである。
　この二つの大きな車輪で躍進中の同社だが、この先を目指すものは何か、
「私たちの願いは"芸術の大衆化"です。欧米ではインテリアに絵を飾ることは当たり前ですが、日本ではまだまだ専門家や投資家の物になっています。これはアートの本当の姿ではありません。しかし最近は、例えば、グリーンインテリアのように、生活に潤いを求める傾向が出てきましたね。絵も同じなんです。本物の作品を生活に取り入れ、より豊かな毎日を送る。それこそが本来のアートです。より良い作品をできるだけ多くの方に提供し、喜びを感じていただく。これが私たちの使命なんです。」
　登坂勇社長の将来を語る目は熱意にあふれている。